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「しゃっくり」はなぜおきる? 
効果的な止め方はあるのか?

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何かの拍子に「ひっく」と突然はじまる「しゃっくり」。

止めようとしても,すぐには止まらないやっかいな現象だ。しゃっくりの原因や治療法にくわしい川崎医科大学の大植祥弘医師は,「しゃっくりとは『横隔膜』および『吸気肋間筋』と『声門』のけいれんです」と説明する。

けいれんとは,筋肉がはげしく収縮する現象だ。

■息が吸われると同時に声門が閉まる

横隔膜は肺の下側にある筋肉の膜だ。
横隔膜が上下に動くことで,肺がふくらんだりちぢんだりして呼吸が行われる。
吸気肋間筋とは,肋骨を引き上げて,肺がおさまっている空間を広げるための筋肉だ。

しゃっくりがおきるとき,脳から横隔膜と吸気肋間筋に対して,筋肉をちぢませる信号が急に発信される。
すると横隔膜が一気に下がるとともに,肋骨が引き上げられ,肺が広がって息が吸いこまれる。

それとほぼ同時に,のどにある空気の通り道である声門の筋肉にも脳から信号が行き,声門が突然閉まってしまう。
それによって,あの「ひっく」という,独特の高い音が出てしまうのだ。

脳から信号が発せられるたびに,しゃっくりが1回おきる。
つまり,しゃっくりがつづいている間は,一定の時間を置いて,断続的に脳から信号が発信されていることになる。

しゃっくりの信号を発するのは,脳の「延髄」という部位だ。内臓や皮膚などへの刺激が延髄に伝わると,反射的にしゃっくりの信号が発生すると考えられている。

ただし,どの程度の刺激でしゃっくりが発生するのか,信号が発せられる回数やタイミングがどう決まるのかなど,くわしいしくみはまだ明らかになっていない。

■早食いや冷たい食べ物が引き金に

しゃっくりを引きおこす原因として最も多いのは,早食いや炭酸飲料を飲むなどして,急激に胃がふくらむこと(胃の膨満)だという。
また,冷たい食べ物などによる胃の急激な温度変化もしゃっくりを引きおこす。

「胃には,脳に直接つながる神経(迷走神経)が非常に多く通っているので,胃への刺激はしゃっくりを誘発しやすいのです」(大植医師)。

たとえば腹部の手術中に,腹腔内を水で洗浄するなどして直接的に胃に刺激が加わると,高い確率でしゃっくりがおきるそうだ。

■二酸化炭素がけいれんをおさえる

世の中には,実にさまざまなしゃっくりの止め方が存在する。
代表的なものに「息を止める」,「水をコップの反対側から飲む」などがある。

大植医師によると,これらの方法に共通するのは,「血中の二酸化炭素濃度を上げる」ことだという。

血中の二酸化炭素濃度が上がると,脳の神経の興奮が抑制されて,しゃっくりなどのけいれんがおさまりやすいことが知られている。

息を止めたり,飲みにくい方法で水を飲んだりすると,呼吸の回数が少なくなり,血中の二酸化炭素濃度が上昇するのだ。

■2日以上つづく場合は病院へ

一時的なしゃっくりは健康な人でもごく普通におきる現象なので,体の異常を心配することはないという。

しかし,「2日(48時間)以上つづくようであれば,何らかの病気がかくれている可能性があります」と大植医師は説明する。

長期間しゃっくりがつづくということは,しゃっくりを誘発する神経が,継続的に刺激されているということだ。
逆流性食道炎などの胃腸の病気や,腫瘍(がん)など,さまざまな病気が持続性のしゃっくりの原因となることが知られている。

「しゃっくり自体が直接の原因で死に至ることはない」(大植医師)というが,長時間つづくしゃっくりは体力を消耗させるうえ,睡眠中もつづくようでは眠りも浅くなる。
持続性のしゃっくりの治療には,神経の興奮をおさえる薬が使われる。

2日以上しゃっくりがつづくようであれば,医師に相談するのがよいだろう。


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