こめかみの辺りがズキズキと痛む片頭痛。
国内では840万人以上の人が片頭痛に悩んでいるという。
東京女子医科大客員教授の清水俊彦医師に片頭痛の予防と治療方法について聞いた。(油原聡子)
清水医師によると、頭痛には、
(1)検査をしても病変が見つからず、頭痛自体が治療対象となる「一次性頭痛」
(2)何らかの病気の症状として起こる「二次性頭痛」−があるという。
片頭痛は一次性頭痛で、セロトニンという脳内物質が血管内で異常に増減することで脳の血管が広がり、周りの三叉神経が圧迫されることで起こるという。
「片頭痛の男女比は1対4と圧倒的に女性に多い」(清水医師)。
女性ホルモンのエストロゲンが変動するときにセロトニンの量も不安定になるため、月経前後や排卵期に片頭痛に襲われやすくなるという。
いったん片頭痛が起きると、数時間から2〜3日、痛みが続く。
頭の片側だけでなく両側が痛む人もいる。
背中や肩、首などの筋肉が緊張して血行が悪くなることで起こる「緊張型頭痛」と違い、片頭痛の場合、頭痛のときに頭の位置を変えるだけで痛みが悪化したり、騒がしい場所やまぶしい場所で痛みがひどくなったりする。吐き気や嘔吐、下痢などを伴うこともある。
清水医師は「頭痛はれっきとした病気。
我慢せずに専門外来を受診してほしい。
頭痛薬を月に10日以上飲んでいたら、一度診察してもらったほうがいい」。
◆症状把握を
診察を受ける前は、自分の頭痛のパターンを把握しておくといい。
「痛みの起こる部位や続く時間、痛みの頻度などを確認しておく。
光や音に敏感になるなど、痛み以外の症状があるのかも伝えてほしい」(清水医師)。
入浴やアルコールの摂取などのきっかけで痛みが強くなることもあるという。
治療には主に薬が使われる。脳の血管を収縮させ、三叉神経から痛みの原因物質が放出されるのを抑えるトリプタン製剤などだ。
清水医師は「片頭痛の人は脳が興奮しやすい体質。たいてい10〜20代で発症します。更年期以降は起こりにくくなるので、痛みと上手につきあってほしい」と話す。
片頭痛は生活の工夫で予防や改善が可能だ。
天候や気温、気圧の変化が大きいときは頭痛を起こしやすい。
強い光で影響を受けることもあるので、外出するときには帽子やサングラスを用意するといい。
また、脳内の血管が過剰に拡張すると片頭痛が起こるため、オリーブオイルやかんきつ類、チーズやチョコレートなど血行を良くする食材を食べるときには注意が必要だ。
清水医師は「食べ物から受ける影響は人によるが、頭痛の引き金になる食材は食べる回数や量を工夫してほしい。
天気の変化など頭痛を起こしやすい条件が重なっているときは、こうした食材は控えた方が安心です」と話している。
■子供も注意を/痛みは短時間
片頭痛は遺伝的要素が大きいとされる病気だ。
清水医師によると、幼い頃は頭痛よりも腹痛や嘔吐、めまい、乗り物酔いなどの症状の方が現れやすい。
子供の片頭痛はいきなり始まり、短時間で治まる。
通常は6時間以内で治まり、短いと1〜2時間で終わることもあるという。
ズキズキとした痛みではなく、頭全体を締め付けるような痛みのこともある。
一般的に男の子の方が発症年齢は低く、幼稚園や小学校低学年から起こることもある。
女の子は初潮を迎える頃から症状が出やすくなるという。