近年深刻化している社会人のストレス問題。
うつ症状を訴えるビジネスマンが増えているようで、今まさに職場のストレスに悩んでいる人も少なくないだろう。
しかし、かたや同じ職場で同じプレッシャーを受けているはずなのに、あまりストレスを感じていない人もいる。
これはメンタルタフネスの個人差ともいえそうなのだが、一体そのような差はどこで生まれるのだろうか?
メディカルケア虎ノ門の五十嵐良雄院長に伺った。
「人間が不安を感じるのは、脳の中の扁桃体という部位で、そこで感じる不安が強くなると自律神経の中枢を刺激し、発汗やふるえなどの身体症状を引き起こします。
メンタルタフネスやストレス耐性の個人差は、扁桃体の感受性によって生まれるといえるでしょう」
扁桃体が不安を感じ続けると前頭葉にも不調をもたらし、「うつ」が引き起こされる
とのこと。
つまり、ストレスやうつ病には、扁桃体の感受性が深く関わっているようなのだ。
ならば、この扁桃体を鍛えて、少々のことには動じないタフなメンタルを持ちたいものだが…。
「基本的に、扁桃体の感受性は遺伝や成長期の環境における経験である程度は決まると考えられています。
現実生活で注意できることは、睡眠不足やカフェイン、アルコールの摂り過ぎに気をつけることくらい。
これらは扁桃体を刺激し、セロトニンの分泌を促してしまいますから。
ただそれも悪化させないというニュアンスであって、扁桃体自体を鍛えるのは難しいですね」(同)
つまり、社会人になってからメンタルタフネスを強化するのは厳しいということか。
思わず落ち込んでしまいそうにもなるが、五十嵐先生いわく
「受けるストレスを減らそうとする努力より、受けたストレスをどのように発散するかが大事」
だとか。
「多くの人が週5日以上拘束されて労働するなかで、ストレスを感じないようにするのは非現実的。
むしろ、ストレスは『受けて当然のもの』と考えるべきなのです。
そのうえで、受けたストレスをどう発散していくか。
その日、その週にたまったストレスを定期的に発散しきれるよう工夫を重ねることが、メンタルヘルスを向上させる最善策なのです」(同)
では、ストレスを発散するコツはあるのだろうか?
「とにかく“自分のための時間”を定期的に作ること。
短い時間でも良いので、自分の趣味やスポーツなど、100%自分のために費やせる時間を確保しましょう。
逆にいくら休みがあっても、ずっと寝ていたり、家事に追われたりではストレスは解消できません。
それらを削ってでも、自分が楽しめることに没頭する時間を意識的に作ることがポイント。
長さに関わらず、“自分のために時間を使えた”という実感が重要です」
1日ごと、あるいは1週間ごとに、受けたストレスを発散しきり、溜めないこと。
この意識を持って生活しないとストレスはどんどん蓄積され、うつへとつながっていくのだという。
春先は憂うつな気分になったり、落ち込んだりする人も多くなる季節。
たまっているストレスをこまめに発散し、楽しい春を過ごしましょう。