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ウォーミングアップの理論
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ウォーミングアップの理論

健康な人間の体は、安静時の何倍にもなるパワーを備えているのに、急に速いスピードで走りだすと苦しくなって走り続けられません。
これはエネルギーを十分に発揮できるための準備ができていない状態で、動作が開始されてしまったことを意味しています。
これに対して、あらかじめ予備運動を行っている場合は、身体の諸機能が運動に適した状態になっており、最大能力を発揮しやすくなっています。
ここではW-UPの効果と、そのメカニズムについて考えていきたいと思います。

●体温の上昇による効果

主運動の前に体を温める目的でW-UPが行われますが、具体的にどのような生体反応が起きているのか把握していきましょう。
一般的に乳酸(疲労物質)を分解する酵素の活性は温度が上がると高くなりますから、化学反応の速度を上げるのには有利になります。
これまでの研究によると、体温が一℃上昇すると細胞の代謝が一割程度増大するという報告があります。
しかし、これは能動的(アクティブ)な予備運動によって筋温を上昇させた場合で、サウナやシャワーなどによる受動的(パッシブ)なW-UPは、皮下の体温が上昇するだけで効果的とはいえません。

●運動と酸素の関係

筋収縮(運動)のエネルギーは、酸素を必要とする有酸素エネルギーと、必要としない無酸素エネルギーの2種類があります。
有酸素エネルギーの最大値は、その人が1分間に体内に取り入れられる酸素の最大量(最大酸素摂取量)によって決まり、
運動の強度が強すぎない限り、必要なエネルギーは主に有酸素エネルギーによってまかなわれます。
しかし、安静状態からいきなり主運動を始めてしまうと、酸素摂取がスムーズにいかないために、不足した酸素分を無酸素エネルギーで補うことになります。
逆に、適度の予備運動を行っている場合には、運動初期からの酸素摂取が容易になって、運動中に利用できる有酸素エネルギーが増加します。
これはエネルギーを効率よく利用することで、無酸素エネルギーの余計な消費を防いでくれます。

●ウォーミングアップの強度

W-UPをどのくらいの強度でやったらいいのかというのは、なかなか難しい問題ですが、効果的に行うには実施する強度が重要な要素になります。
W-UPは運動初期からの酸素摂取をスムーズし、有酸素エネルギーの利用を高めますが、この効果は高強度であるほど大きくなります。
しかし、強すぎるW-UPが当然いいわけではなく、過剰なアップは多くの無酸素エネルギーを消費し、結果的に両エネルギーとも十分に発揮できなくなってしまいます。
かといって反対に、無酸素エネルギーをまったく使わないような軽い運動がいいわけでもありません。
ある程度強いW-UPを行うと、血中乳酸濃度が少し高められることで、運動中の血中乳酸濃度の増加が抑制されます。
つまり、この反応を有効に利用すると、効果的なW-UPが行えるということです。
これは残念ながら具体的な数値にして、どのくらいの強度とは提示することができません。
これは、乳酸の蓄積や疲労感などは主観的なものであるため、個人差が幅広い範囲であります。
そのため、基本的には中程度の運動強度が好ましいという感覚でよいと思います。

●ウォーミングアップ効果の持続時間

研究によると、ウォーミングアップ効果の持続時間は時間が経過するにつれて減少し、1時間の休憩を挟んでしまうとほとんどが消失してしまうそうです。
したがって、W-UPの効果を十分に利用するためには、終了後にできるだけ速やかに主運動を行うことが望ましいといえます。
しかし、30分程度までの休息であれば、その効果は軽度の減少ですむので、30分以内を目安に主運動を開始させましょう。
また、待ち時間が発生してもしなくても、ストレッチングや軽度のエクササイズ,衣服の着脱など、体温の急激な低下防止に努めることが大切になります。